日本におけるファッションショーの変遷。日常で着回しやすい「リアルクローズ」へ

ファッションモデル

ファッションショーと聞くと、華やかで奇抜な服を着たモデルがランウェイを歩く光景を思い浮かべる方は多いと思います。

しかしファッション業界に詳しい方なら、現代の日本のファッションショーは、そんな多くの方が抱くイメージとは、少し異なっていることをご存知でしょう。

多くの人が抱いているファッションショーのイメージは、2000年代より前のものです。2000年代以降の日本のファッションショーは、かつてのショーとは変容しています。

今回は日本におけるファッションショーの歴史と、現代で重視されている「リアルクローズ」について解説していきます。

  

ファッションショーの歴史

まずは、ファッションショーの歴史を振り返ってみましょう。
歴史を振り返ることで、いつ、どのように日本のファッションショーが変わっていったか、変遷の様子を詳しく知ることができます。

1850年代〜コレクションの披露に人間のモデルが採用される〜

モデルが服を着て颯爽とランウェイを歩く。そんな誰もが思い浮かべる「ファッションショー」の原点は、1850年代のパリにあります。

当時、偉大なオートクチュールデザイナーとして活躍していたシャルル・フレデリック・ウォルト(チャールズ・フレデリック・ワース)が、マネキンではなく人間のモデルに服を着せ、自らのコレクションを披露しました。これが現代で知られるファッションショーの始まりと言われています。

1910年代〜現代まで続くファッションショーのシステムが生まれる〜

1910年代になると、シャルル・フレデリック・ウォルトにより「パリ・オートクチュール組合」が設立されます。

パリ・オートクチュール組合に加盟するには、いくつもの条件をクリアしなければなりませんでした。その1つが1年のうちに2回、コレクションを開催するというものです。

年に2回、人間のモデルが服を着てそれを披露する。まさに多くの現代人がイメージするファッションショーそのものです。

こうして現代まで続くファッションショーのシステムは生まれました。

1920年代〜日本で初めてのファッションショーが開催される〜

1927年は、日本で初めてのファッションショーが開催されたと言われています。
開催地は東京の日本橋にある三越呉服店、現在の日本橋三越本店にあたる場所です。

当時はまだファッションモデルという職業がなかったため、女優がモデルとなり、新作のファッションを披露しました。

ただし、この時に披露された服は洋服ではなく着物、そしてウォーキングではなく、日本舞踊によるパフォーマンスが行われたとのことです。

日本で現代のようなファッションショーが開催されるのは、もう少し先のことになります。

1950年代〜高級既製服のプレタポルテが登場〜

1950年代になると、ファッションショーが世界で流行しました。
日本においても、正式なファッションモデルを用いたファッションショーが本格的に普及していきます。

1950年代以前の高級服を用いたファッションは、着る人が個々に仕立ててもらうオートクチュールが主流でした。しかし、1950年代になるとオートクチュールから、「プレタポルタ」と呼ばれる高級既製服へ、流行が移り変わっていきます。

以降、オートクチュールをメインに手がけるブランドは減っていき、代わりにプレタポルタをメインに手がけるブランドが増えていきました。

1970年代〜第1回パリ・コレクションが開催される〜

1950年代に登場したプレタポルテのファッションは、1973年に開催された第1回パリ・コレクションにも取り入れられることになります。

第1回パリ・コレクションは、オートクチュールとプレタポルテの2部門からなる形式で開催されました。この形式は、現代のパリ・コレクションにも引き継がれています。

個性的かつ独創的なファッションが披露されるパリ・コレクションは、後に世界中のファッション関係者から注目される一大イベントへと成長します。

日本においても、上流階級に向けたオートクチュールのファッションショーが開催されるようになっていきました。

2000年代〜一般人にも親しまれる「リアルクローズ」のファッションショーへ〜

2000年代になると、日本で開催されるファッションショーにおいて、「リアルクローズ」が重視されるようになりました。

リアルクローズとは現代人のライフスタイルやオケージョンの変化に伴い、日常的に着回しやすく機能的な服のこと。この変化により、業界関係者のみに注目されていたファッションショーが、現代のように、一般の人達にも親しまれるものになったのです。

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オートクチュールって何?

オートクチュールって何?

日本において、オートクチュールやプレタポルテがメインだった2000年代以前とは異なり、2000年代以降のファッションショーはリアルクローズが重視されるようになったとお話しました。
ここからは、そんなオートクチュールとプレタポルテ、リアルクローズについて、もう少し詳しく解説していきます。

まずは「オートクチュール」について。

オートクチュールは注文を受けてから作られる、一点ものの高級服を指します。日本語だと「高級仕立服」と訳されることが多いです。
元々パリをはじめとしたファッションの中心地では、高級服といえばオートクチュールを意味するほどに愛されていました。
事実、当時はオートクチュールのブランドが数多くありました。

しかし、オートクチュールデザイナーが既製品の製作を始めたことによって「プレタポルテ」が流行。オートクチュールブランドの数が減っていったと言われています。

プレタポルテって何?

高級な衣服を指す言葉として、オートクチュールの他に「プレタポルテ」があります。

プレタポルテは、日本のファッション業界において「高級既製服」を意味します。
一般的に流通している大量生産された既製服の中でも、比較的品質に優れた高級品だけがプレタポルテと呼ばれます。

プレタポルテ=高級既製服の概念ができたのは、1949年のことです。この頃、フランスでは既製服を「コンフェクション」という言葉を用いて表現していました。
しかし、コンフェクションという言葉には「質が悪い」「安価」などの意味が含まれていて、高級品を指すには向きません。
そこで、差別化のために高級既製服を指す「プレタポルテ」という言葉が考案されました。

その後1950年代以降に、プレタポルテという言葉が一般的に使われるようになりました。

リアルクローズファッションショーって何?

リアルクローズファッションショーって何?

最後に、現代日本のファッションショーで重視されている「リアルクローズ」について解説していきます。

リアルクローズとは、日常的に着回しやすい、機能性に優れた服を指します。
日本語で「現代的な服」などと訳されます。

オートクチュールとして生み出される服は、デザインにこだわり抜いた斬新なものが多く、見る人を魅了するものです。一方で、日常的に着るには少々華美で、奇抜さを感じるものも少なくありません。

そうしたデザイン性の高さよりも、普段の生活における着やすさを重視した実用的な服が、リアルクローズに当たります。

そして、このような実用性の高い服をメインに紹介するファッションショーを”リアルクローズファッションショー”と言い、多様性のあるライフスタイルや機能性に優れるアイテムが重視されるようになった現代の日本で、多くの人の心を掴んでいるのです。

リアルクローズのスタイリング例

リアルクローズと呼ばれる服には、シンプルかつカジュアルなものが多くあります。

スウェットシャツもそのアイテムの一つです。ゆったりとしたシルエットで締め付け感がないことから、リラックスしてオシャレを楽しむことができます。
タイトなスキニージーンズやきれいめスカートなど、様々なボトムスに合わせやすい点も着回しやすく、魅力的です。
また、最近ではジャケットと合わせてオフィスで着用する「オフィスカジュアル」のスタイリングにも取り入れられています。
固い印象を与えず、それでいて程よい上品さと清潔感があるスウェットシャツは、ビジネスシーンにもぴったりのファッションアイテムと言えるでしょう。

スタイルアップが叶うジャンパースカートもリアルクローズであり、人気が高い服です。楽な着心地ながら、体型をスッキリと見せてくれます。
トップスを変えるだけで全体的な雰囲気もガラッと変化することから、1着あれば幅広いオシャレができます。

リアルクローズファッションショーが増えた理由

ファッションショーの会場
リアルクローズファッションショーが増えた理由は、ショーで披露した服を一般の生活者にも購入してもらいたいというブランド・メーカーの希望によるものです。

それまでのファッションショーでよく見られた服は、アバンギャルドなデザインのものが多く、一般人が日常的に着る服としては適していませんでした。
また、高級服に該当する価格の高さも、購入のハードルを上げていたでしょう。
これによりファッションショーは、業界関係者をはじめとした一部の人のみが楽しむイベントとされていました。

そこで日本では、一般的な生活者でも購入可能な価格帯にあるファッション性の高い服を披露するファッションショーが普及し始めます。これがリアルクローズファッションショーです。

こうして現代のファッションショーは、一般人にも広がっていったのです。

日本におけるリアルクローズファッションショー

ここからは、リアルクローズファッションショーについて解説していきます。
日本で開催されている代表的なリアルクローズファッションショーは以下の通りです。

  • 東京ガールズコレクション
  • 東京コレクション
  • 神戸コレクション

それぞれの概要について見ていきましょう。

東京ガールズコレクション

上に列挙したファッションショーの中でも、とりわけリアルクローズを重視しているのが東京ガールズコレクション(TGC)です。
スタートした時も、コンセプトとして「リアルクローズを世界に」を掲げていました。

そのコンセプトは今も変わらず、リアルクローズのブランドが多く参加するファッションショーとなっています。
また、手頃な価格帯のアイテムがメインであるショーとしても知られています。

東京ガールズコレクション(TGC)はどんなファッションショー?

東京コレクション

東京コレクションは、東京を舞台に開催されるリアルクローズを対象としたファッションショーです。

パリ、ニューヨーク、ロンドン、ミラノに並ぶ主要都市を開催地とするファッションショーとして「世界5大ファッションウィーク」に位置付けられています。

毎年春と秋の年2回、パリを皮切りにミラノ、ロンドン、ニューヨークで世界的なコレクションが続けて開催され、シーズンを先駆けて新作が発表されます。

神戸コレクション

神戸コレクションは、例年兵庫県神戸市にて開催されている、リアルクローズを対象としたファッションショーおよび音楽のイベントです。

観客は10代〜20代の若い女性客が多く、テレビ放送のほかにブログサイトやインターネット配信も行われているのが特徴です。

リアルクローズファッションショーに関わる職種

ここからは、リアルクローズファッションショーに仕事で携わりたいと考えている方に向けて情報を発信していきます。
まずは、リアルクローズファッションショーに関わる職種をご紹介します。

リアルクローズファッションショーに関わる職種は以下の通りです。

  • ファッションモデル
  • ファッションデザイナー
  • パタンナー
  • スタイリスト
  • その他

それぞれについて解説していくので、一緒に見ていきましょう。

ファッションモデル

ファッションモデルはファッションショーにおける広告塔のような存在で、最新のファッ
ションアイテムをまとい、多くの人にアピールして宣伝する人を指します。

ファッションアイテムの魅力を多くの人に伝え、購入してもらうことを目的としています。

ファッションデザイナー

ファッションデザイナーはその名の通り、ファッションアイテムのデザインを作成する人のことです。

基本的には企画するところから始まり、性別、年代、どんなシーンで着用するかなどのコンセプトが定まったら、本格的なデザイン作りに入っていきます。

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パタンナー

パタンナーとは、デザイナーが作成したデザイン画をもとに、製品化するために必要な型紙(パターン)を製作する人のことです。

デザイン画からデザイナーの意図を読み取り、平面から立体へ起こすための作業を行います。

最終的な仕上がりを左右するくらい重要な作業なので、強い責任感や集中力が求められます。

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スタイリスト

スタイリストとは、ショーに出演するモデルの服やアクセサリーをスタイリングする人のことです。

最初にクライアントと打ち合わせを行い、モデルごとにどのようなルックにするかを話し合います。

使用するルックの方向性が決まったら、撮影に向けてレンタルやリースなどで服や小物を用意します。

そして、用意したルックをモデルに着てもらうことで、ブランドコンセプトがきちんと表現されているかを確認します。

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その他

リアルクローズファッションショーに関わるその他の職業としては、編集者やライター、カメラマンなどのメディアに強い職種が挙げられます。

このような職種の人達はファッションショーをメディアに露出する力を持っています。

彼らを呼べばファッションショーをより多くの人に知ってもらうことができるため、ショーに招かれることが多いです。

リアルクローズファッションショーの仕事に携わるには

服を選ぶ女性たちリアルクローズファッションショーに関係する仕事は、モデルやデザイナー、スタイリストなど様々です。

そのため、将来的にリアルクローズファッションショーに携われる仕事をしたいのであれば、まず初めに自分がどんな形でショーに携わりたいかを考えるところから始めてください。

そして目指す方向性が決まったら、今度はその方向性に即した専門学校を探しましょう。

この際に注意したいのが、学校によって教育内容が異なるということです。

あまり考えずに選ぶと、自分が学びたいことが学べなかったりする可能性があるので、入学前にしっかり確認することが大切です。
色々な学校を見比べて自分に合ったところを見つけてください。

ファッション業界を目指すうえで大切なこと

ファッション業界を目指すうえで大切なこと

日本のファッション業界において、今後リアルクローズはさらに重視されていくことでしょう。
現代の日本人は、デザイン性以上に機能性や実用性を重視する傾向にあります。
また、所得の変化によって出費に対し、慎重になる方も増えています。

以上の理由から、引き続きリアルクローズは高い人気を維持していくこと、さらに需要が上がることも想定できます。

ファッション業界は、とても流れの激しい業界です。
今後の流行がどのように変化しても適応できるよう、ファッション業界に身をおくのであれば、常に情報をアップデートしていくことが大切です。

エスモードでは変化するファッション業界に合わせたカリキュラムを展開

エスモードでは、独自のメソッドにより変化するファッション業界に合わせたカリキュラムが展開されます。
授業を通して「美」の感覚や時代に合った審美眼が養われ、さらには設計図の作製をはじめとした技術も身につけることが可能です。

ファッション業界で長く活躍し続けられる人材へと成長したい。そんな方は、ぜひエスモードへの進学を検討してはいかがでしょうか?

まずはオープンキャンパスやイベントへお越しください。

ミニコレクションを開催。テーマは「違和感」

エスモードへの進学をお考えの方に、ぜひお越しいただきたいのは2022年10月23日に開催されるミニパッサージュ(ミニコレクション)です。

本コレクションは、エスモードの1年生が5月より6回の授業をかけて作り上げた、オリジナルのスウェットシャツを発表する場となっています。

オリジナルスウェットシャツの制作にあたり、カリキュラムはパリ校のものを採用しています。
パターンをベースに、学生それぞれが技術やアイデアを駆使し、オリジナルスウェットを完成させることで、アルチザンな作品作りの腕を磨くことを目的とした取り組みです。

今年のファッション業界におけるテーマは「違和感」。グッチとアディダス、リーボックとマルジェラのスポーツウエアとラグジュアリー、コーチとAPEといったブランド同士のコラボのように、意外な組み合わせによる面白くて新しい価値がたくさん生み出されています。

エスモードにおいても、本コレクションのテーマとして「違和感」を設定しています。意外な素材や加工の違和感、色、プリントの組み合わせを楽しむ作品を発表いたします。

本コレクションは、舞台の制作、ショーの演出・構成、音響、ライティング、ルックのスタイリング、ヘアメイクのすべてを学生が考えました。学生によって演出されたイベントである点も、大きな見どころと言えるでしょう。

今回の開催地は3年前までの恵比寿ガーデンプレイスではなく、エスモード校内となっています。
本コレクションで披露されるスウェットシャツは、リアルクローズを代表する服の1つ。リアルクローズのスタイルを研究したい方にこそご覧いただきたいコレクションとなっています。

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まとめ

ここまでファッションショーの歴史やリアルクローズについてお話ししてきましたが、いかがだったでしょうか?

今後のファッション業界において、リアルクローズはさらに人気が高まると予想されます。
日本のファッションショーにおいても、リアルクローズを重視したショーは、多くの人に注目されることでしょう。

将来ファッションショーの仕事に携わりたいという方は、リアルクローズを含む時代に即したファッションの知識や技術について学べる専門学校に通うことをオススメします。

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エスモードジャポン 広報部
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エスモードは、東京恵比寿にあるファッションの学校です。 フランス・パリで世界初のファッション専門教育機関として1841年に開校。 現在は世界13か国に19校あり、その日本校であるエスモードジャポンの広報を担当しています。 世界のネットワークを生かした情報発信とファッション業界について解説していきます。

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